2022年5月 翻訳のヒント(英訳) - 「牛」 をどう英訳する?
今回は、軽い話題で行きたいと思います。日本は歴史的に農耕中心で来た国で、獣食はわずかながら存在していたものの、本格的な牧畜・畜産は明治以降の振興策で普及したようです。
その結果、欧米圏で例えば「牛」を表現する語は、bull(去勢していない雄牛)、ox(去勢した雄牛)、calf(仔牛)、steer(食肉用に去勢されたオスの仔牛)など、様々な単語があるのに対し、われわれ日本人学習者の中には「牛」といったら cow しか出てこない人もいるようです。
例えば次の和文を下のように英訳した翻訳者がいます。
原文: 兵庫県の但馬牛は高級な牛肉を供給しています。
生徒訳: Tajima cows in Hyogo Prefecture provide excellent beef. |
もうお気づきのように、cow はここでは適切ではありません。通常、cow は乳牛を意味するからです(広く雌牛と訳すこともあります)。一方、食用の牛は集合的に cattle と呼ぶのが普通です。
よって次のように修正してみました。
修正訳: Tajima cattle in Hyogo Prefecture provide excellent beef. |
(cattle は集合名詞なので、a cattle とか cattles とは書けないことに注意。)
なお、自動翻訳ではどう出るのかと興味本位で Google と Weblio にあたってみましたら、上の原文の訳は次のように出てきました。
Google 翻訳:Tajima beef in Hyogo prefecture supplies high quality beef. |
Weblio 翻訳:Tajima beef in Hyogo Prefecture supplies high-quality beef. |
これはひどいですね。生き物の「牛」が肉の ”beef” になっています!自動翻訳を使うときは気をつけましょう。
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