2019年9月 翻訳のヒント(和訳) - “net-shape”はネット状?
いきなりですが、あなたは次の英文をどう訳しますか?(1) Another area of interest is forming parts to nearly net shape.
もしかして、「もう一つの興味ある分野は、部品をネット形状に形成することである。」などと訳していませんか?
次はどうでしょうか?
The ducts of the present invention are manufactured by near net-shape manufacturing techniques.
ここまでくると、「あれ?もしかして net shape というのは網目状とかネット状という意味でないのでは?」と気づくかもしれませんね。
そうです。この “net shape” というのは冶金分野、特に粉末冶金の技術用語で、成形後に追加工を必要とせずに完成品に仕上げる技法に関して使われる単語です。”near net-shape” は完成品に近い状態ということになります。
ここでもう一度辞書にあたってみましょう。“net” に「正味の」という意味があることは、net profit(純益)、net weight(正味重量)などの表現からどなたもご存じだと思いますが、このほかに「最終的な」という意味も出ていると思います。今回の例文はこの意味で使われているものです。
よって、(1)の訳は次のように修正できます。
(修正例)もう一つの興味ある分野は、部品を最終製品に近い形状に成形することである。 |
“net-shape forming” は、「ネット成形加工」と訳される技術用語ですが、このネットは網目状のネットのことではなく、「最終の」という意味ですから、net-shape は「最終製品形状」ということになります。
冶金分野の方には常識的な語でも、専門外の訳者が訳すと、思い込みで誤訳してしまいがちです。
“net shape” には “final shape” の意味があることを覚えておきましょう。
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