翻訳のヒント[バックナンバー]

2019年3月 翻訳のヒント(英訳)- クレーム中の ”one or more”

 今回は、米国用クレームの英訳において気を付けた方がよい表現を取り上げます。

 米国出願では、公式には ”one or more”、”two or more” 等、”数詞+or more” という表現は問題ないとされております。

 しかし、審査官によってはこの “or more” という表現がクレーム中にありますと、indefinite(不明瞭)であるとして objection をかける場合があります。

 ちなみに、objection とは、発明そのものが新規性、進歩性などの特許法上の特許要件を満たしていない場合に発せられる rejection と異なり、いわゆる形式上の不備に対する拒絶ないし補正指令をいい、通常、審査官の言う通りに補正すれば解消されます。

 次の表現を見てください。

<original>

a bottle having one or more removable handles

 これは次のようにすることができます。

<improved>

 (a) a bottle having at least one handle

 (b) a bottle having a handle


 また別の例を挙げます。

<original>

heating the mixture for 3 or more hours

 これも上と同様、次のように書き換えることができます。

<improved>

 heating the mixture for at least 3 hours


 ナショナルルートの米国出願の場合は今後の中間処理を念頭に置き、「3時間以上加熱する」は “heating for 3 or more hours” でなく、”heating at least 3 hours“ とするのが賢明です。

 しかし、PCT出願の各国移行時に、翻訳文としての英訳を調製する場合、原和文の記述が「少なくとも3時間」でなく、「3時間以上」である場合は、やはり、

 heating the mixture for 3 or more hours

 と訳すのが原著者の発想に忠実な英訳であるといえるでしょう。

 この場合、もし運悪くobjection を受けてもその時に審査官の指示に従って補正すればいいだけですので、翻訳の段階ではわざわざ at least 3 hours としないことをお勧めします。



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