2015年3月 翻訳のヒント(英訳) - 観点
明細書で「・・の観点から、・・が好ましい」等の表現をよく見ると思います。英訳の際、この「観点」が曲者です。「観点」の訳としては "viewpoint" や "standpoint" が直ぐに思い付きます。しかし、原文の意図が本当に「観点」なのか否か、訳す前によく考える必要があります。すると、"viewpoint" や "standpoint" 以外を使った表現のほうが適切な場合があることが分かります。まず、viewpoint や standpoint がしっくりくるケースを挙げてみましょう。
(原文)環境保護の観点から燃料電池自動車の更なる普及が望まれる。
(英訳文)More fuel cell vehicles should be employed, from the viewpoint of environmental protection.
環境保護、省エネ他、抽象概念的な見地にはviewpoint やstandpointが適切なことが多いです。
では、次のような例はどうでしょうか。
(原文)熱分解を防止する観点から、本油性組成物は保存料を含むことが好ましい。
(直訳文)From the viewpoint of prevention of thermal decomposition, the oily composition preferably contains a preservative.
確かに漏れなく訳されていますが、原文の「熱分解を防止する」という具体的な課題は、「観点」より「目的」と解釈したほうが自然です。そこで改訳してみます。
(改訳文1)In order to prevent thermal decomposition, the oily composition preferably contains a preservative.
(改訳文2)The oily composition preferably contains a preservative for preventing thermal decomposition.
もう一例挙げてみます。
(原文)生成するポリマーの融点を200℃以上にする観点から、重合時間は2時間以上が好ましい。
この場合も「観点」をそのまま訳さないほうが分かり易くなると思います。皆様ならどう訳されますか?
日本語の「観点」は何となく解釈できてしまいがちですが、明細書では観点以外の意味で使われることが多いと思われます。「観点」が本当に「観点」であるか否かを見極めた上で訳出すると、分かり易く説得力のある英文となります。
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