2014年12月 翻訳のヒント(英訳) - 翻訳祭
去る11月26日、第24回JTF(日本翻訳連盟)翻訳祭が東京(市ヶ谷)で開催されました。特許関連では、ジャッジパテントアソシエイツ所長の James W. Judge の "Rethinking of the Grammar of Patent Translation" という講演がありました。その中に、英語においては日本語より論理性を意識しないと誤訳してしまう英訳の例が挙げられておりました。皆様にもぜひ参考になさって頂きたいので講演のレジュメから紹介します(太字の部分は原文そのままです)。(原和文)再循環部は、前記循環部により閉鎖した導管が検出されなかった場合には、該導管へ流体を流して閉塞物を排出するように構成されている。
(誤訳文)If a blocked conduit has not been detected by the circulating unit, the recirculating unit is configured to flow a fluid into the conduit to discharge the blockage.
この訳文の is configured to の位置からは、閉鎖導管が検出されなかった場合には、再循環部が閉塞物を排出するように構成されているという意味となります。では、閉鎖導管が検出された場合についてはどのように構成されているかとの疑問が浮かびます。原文の意図はむしろ再循環部が本来どのように機能するかを言いたいので、次のような修正訳となりました。
(修正訳文)The recirculating unit is configured such that if a blocked conduit has not been detected by the circulating unit, the recirculating unit flows a fluid into the conduit to discharge the blockage.
英語は論理的であるだけに、誤訳(というより「原著者が表現したいことを表わしていない英文」といった方がいいかもしれませんが)も日本語よりもストレートに響きます。
更に、問題は、チェッカーが上の「誤訳文」を読んで誤りを指摘できるかどうかです。原和文を単語や句のレベルで分解してチェックしても中々今回のミスには気付かないかもしれません。
今回の例は日本文自体には特に問題はありません。しいて言えば「場合には、」の読点を削除し、且つ「排出するように」のうしろに読点を加えることで、より誤読が防げるとは思いますが・・・。
翻訳者もチェッカーも、英文のみで意味が通じるかを更に技術的内容の点から確認する必要があるという、特許分野では特に留意しなければならない話題でした。
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