翻訳のヒント[バックナンバー]

2014年8月 明細書英訳(機械分野) - 空間の表現)

 「明細書英訳」としましたが、本日のトピックは、特に機械分野の発明のクレームを記述するときに注意すべき事項です。

 ある装置をクレームするとき、その装置の構成要素A,B,C・・・を特定し、且つそれらの間の相互関係を定義する、ということはどの国における出願でも同じことです。

 しかしこの「構成要素」というのが少し曲者で、実体のあるものでなければなりません。

 言い換えれば、空(くう)であるもの、即ち、空間そのものを構成要素とすることはできません。実体が無いからです。空間とは例えば「溝」や「穴」、「孔」などです。これらを次のように積極的に構成要素として掲げることはできません。

(良くない例)
A toy comprising:
   a spherical body,
   a stick,
   a hole provided in the spherical body for receiving the stick,
   .......(以下略)

 しかし、溝や穴が存在すること、或いは溝や穴の形状がその発明に重要な役割を果たしている場合、これらを記述する必要があります。

 そういう時は直接、穴を構成要素とするのではなく、間接的に「穴を有する球体」とか「溝を画定している壁」など、あくまでもその空間部を画定している部材(=球体、壁)として記述します。

 穴は部材ではありません。翻訳者としては原文の記述どおりに訳すことしか考えないので、穴が部材のように原和文明細書に書いてあったら、そのとおりに訳してしまうかもしれませんが、可能であれば、a spherical body having a hole therein のようにできないか、考えてみましょう。

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