翻訳のヒント[バックナンバー]

2014年1月 翻訳のヒント(英訳) - 「方法」の訳には注意

 本年もどうぞ宜しくお願い致します。
 今年第一回の話題は、「方法」の名称を英訳する際の注意点です。
 明細書には種々の分析方法や加工方法が記載されます。日本語では「方法」であることを明確にする目的で、「法」を末尾に置いて「XXX法」と表現されることが多いのです。 しかし、この「法」を英訳する際には注意が必要です。「法」を敢えて訳さないほうが自然でより適切となる場合があります。次の例を見てみましょう。

1.ELISA法
 ELISAは"Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay"(酵素結合免疫吸着法)の略語です。ELISAという語の中にすでに「方法」の概念が入っています。従って、
"The antigen was determined through the ELISA method."という英文を書いた場合には、「アッセイを行うための新しい方法」という意味を 出したいのでない限り"assay method"「アッセイの方法」となり、冗長ですっきりしない表現になってしまいます。従って、methodは入れずに、
"The antigen was determined through ELISA."のほうが自然です
(ELISAを無冠詞で使っています)。

2.HPLC法
 HPLCは"High-Performance Liquid Chromatography"(高速液体クロマトグラフィー)の略語です。 1と同様な理由で、
"The sample was analyzed through the HPLC method."という英文より、
"The sample was analyzed through HPLC."が自然です。

3.HIP法
 HIPは"Hot Isostatic Pressing"(熱間等方圧加工法)の略語です。これも上と同様な理由で、
"The powder was compacted through the HIP method."という英文より、 "The powder was compacted through HIP."が自然です。

 但し、「法」を入れないと意味が通じない場合(アンモニアソーダ法、"ammonia soda method")や、 「XXX」が人名や社名の場合には「法」の訳は除けません。「リートベルト法」、「ソハイオ法」の訳は、"the Rietvelt method" "the SOHIO (Standard Oil of Ohio) process"ですが、 "method"や"process"が無いと不自然です。

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