2013年12月 明細書英訳(機械分野) - 安易な "for ~ing" に注意!
機械分野では、部材と部材の関係を、位置関係からだけでなく機能や相互作用の面からも正しく理解して適切に訳出することが必要です。
例を挙げてみましょう。
「発光ダイオード20を搭載する素子用端子13,14は …… を介して外部接続端子7,8に接続されている。」
この文章をある翻訳者は次のように訳しました。
A) The element terminals 13, 14 for mounting the light emitting diode 20 thereon are connected to outer connection terminals 7, 8.
また別の翻訳者は次のように訳しました。
B) The element terminals 13, 14 on which the light emitting diode 20 is mounted are connected to outer connection terminals 7, 8.
(注:違いをわかりやすくするために下線を引いてあります)
技術内容や原文の意図とは無関係に上のA)とB)を英文としてみた場合、どちらの文章にも英文法上の間違いはありません。
しかし、意味する内容はA)とB)とで異なります。
即ち、素子用端子13,14と発光ダイオード20の関係について、
英文A) からは、 素子用端子13,14は、その上に発光ダイオード20を搭載する目的で存在するものであると理解され、
一方、英文B) からは、素子用端子13,14と発光ダイオード20の位置関係について、
後者は前者の上に存在していることを述べているのだと理解されます。
逆にいうと、和文の「発光ダイオード20を搭載する」の箇所を「発光ダイオード20を搭載する目的の」
と解釈すると英訳A) になり、「発光ダイオード20が(その上に)搭載される」と解釈すると英訳B) になります。
上の短い和文だけから英訳A)とB)のどちらが原文の意図に沿っているかを断定することはできませんが、
機械・電気分野の明細書を英訳する場合には特に、翻訳者は常に部材同士がどのように作用しあっているのか、いないのか、
それぞれの機能や目的は何なのかを理解しつつ訳出することが必要です。
よく考えずに安易に "for ~ing" としてしまうと原文の意図とずれることがありますので気をつけましょう。
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