翻訳のヒント[バックナンバー]

2012年8月  "after" と "later " の使い方

 今日はいきなり例題から始めましょう。次の文はバイオ分野の特許明細書の実施例部分からの抜粋です。カッコの中に入るのは正しくは "after" でしょうか、"later" でしょうか?

The composition prepared as described above was injected into the tail vein of the mouse (body weight: about 30 g). Seven days (      ), the fetus was isolated by cesarean section.

 いかがですか?上のカッコの中に入るのは after ではなく、later です。よって、答えは

Seven days later, the fetus was isolated by cesarean section.

となります。

 日本人にとって after later も英語学習のごく初歩段階で学ぶ単語であるにも拘らず、翻訳を志すプロ志向の人々の中にも正しく使えない人が見られます。今一度、文法書をひもといて確認・復習しておきましょう。

  "after" の機能は前置詞、副詞、接続詞、形容詞、そして特殊な例として名詞もあります。これに対し、 "later" は、形容詞、副詞、間投詞です。

 このように、品詞のカテゴリーから見ても、"after" と "later" は完全に replaceable ではありません。

 簡単に述べますと、例えば "Seven days after," といった場合、この "after" は副詞となります。訳としては、単に「(その)五日後、」でもいいかもしれませんが、本当の意味は「未来のある時点から五日後、」なのです。よって上のような過去形の文章には使えません。過去の事象については正式には "seven days later" という言い方が正しいとされています。

例1) Three years later, they got married.

→ 訳例:それから3年して彼らは結婚した。(過去のこと)

例2) "Seven days after they got married, a tragedy happened to them."

→ 訳例:結婚して7日後に、夫婦に悲劇が訪れた。(この場合の "after" は接続詞ですので、副詞としての用法と異なる点に注意が必要です。)

 また、ジーニアス英和大辞典によると、現在を基点とする場合には "after" も "later" も不可で、「3日したら東京に行く」は、"I'll go to Tokyo three days from now (又は in three days)" と表現するべき、と説明されていますので、このことも合わせてしっかり記憶しておきましょう。

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