翻訳のヒント[バックナンバー]

2012年3月 翻訳のヒント(英訳) 原文の内容を整理して正しく理解しましょう

 明細書を英訳する際、原文の表現や用語に引きずられ、あたかも機械翻訳のように英訳すると書き手が意図した内容と異なるとんでもない英文となることがあります。次の例を見てみましょう。  


(原文)本発明のプリント配線板は、腐食に起因するクラックを防止することができる。
(Aさんの英訳)The printed wiring board of the present invention can prevent cracking caused by corrosion.

 この場合、原文の言わんとするところは、本発明のプリント配線板にはクラックが入り難いということです。ところが、Aさんの英訳では、プリント配線板がクラックを防止する主体となっています。  

(改訳例1)
The printed wiring board of the present invention has resistance to cracking which is caused by corrosion.

 改訳例1の中には、「腐食に起因するクラック」をcracking which is caused by corrosionと訳していますが、この文章ですと、実際にクラックが起きている印象を与えかねません。そこで、仮定法を用いて、「本発明の適用がなければ起こったはずのクラック」を明確にしたのが改訳例2です。  

(改訳例2)
The printed wiring board of the present invention has resistance to cracking, which would otherwise be caused by corrosion.

 Aさんのようなケースは、自分の英訳を和訳してみると矛盾点がはっきりわかります。日本語の字面をなぞっていては良い英訳はできないという典型的な例です。それを防ぐには、頭で理解し整理した内容をアウトプットしなければなりません。  

 時間がないときなど、ついこんな訳をしていることはありませんか?抜けのチェックだけでなく、翻訳者には常に客観的な視点が必要です。

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