2010年12月 "detailed structure" とは?
機械関係の明細書では、「詳細な構造」という表現をよく見かけます。例えば「図5は本発明装置のヒンジ部の詳細な構造を示す」などです。日本語としては全く普通の表現で、奇異な感じはしません。
一方、この日本語表現に対し、多くの日英翻訳者は"detailed structure"という英語表現を採用しがちです。確かにword-for-wordの翻訳をしようとすると "detailed structure" で全く正しいようですが、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。
"detailed information" (正しい表現です!)という表現と比較してみてください。
"detailed structure" という表現には、普段日本語nativeが気づいていない論理の飛躍があります。それは、モノの構造はあくまで一つであって、詳細な構造も簡単な構造もないということです。
あるのはその構造を「詳細に記述」するか、「簡単に記述」するか、という問題です。
日本語の「詳細な構造を示す」という表現は、実は「構造を細かいところまで仔細に示す」ことを簡略的に表現したものです。日本語ではこのように論理的厳密さよりも単に「より短い表現」を好む傾向があるようです。これが部外者にとっては、いわゆる「飛躍した表現」、「曖昧な表現」になってしまうわけです。
英語で "detailed structure" と書いたからといって権利範囲が影響されることはないでしょうが、日本語nativeの翻訳者は、このような自国語の特徴をよく理解し、上のような点をもおろそかにしない「言語感覚」を身につけていたいものです。