翻訳のヒント

2010年9月 文頭大文字のルールと化合物名

英文の場合、文頭は大文字で始めることは当然のことですが、数字や記号を含む化学物質を文頭に置く場合多少悩んだことはありませんか。細かい話ではありますが、整理してみましょう。

例:2-プロパノール
 先頭の「2」は炭素鎖の位置番号ですので、これを"two"とスペルアウトすることはありません。従って、プロパノールの"p"が文頭の文字となります。他の位置番号数字で始まる化合物についても同様ですが、比較的迷わないケースです。下の例文を参照ください。

(正) 2-Propanol was added to the reaction mixture.
(誤) Two-propanol was added to the reaction mixture.
(誤) 2-propanol was added to the reaction mixture.

例:tert-ブチルアルコール
 同じ化合物であっても、その結合様式が異なるものが各種存在することがあります。その場合、結合様式を表わすために構造に関する記号が化合物名に付与されます。上の「tert」は三級(炭素原子の結合様式)を表わす記号で、正式にはイタリック表示されます。このような記号は、あくまで記号であって文中のどこにあろうと、大文字小文字の変化はありません。従って、語の先頭はこの記号を取り除いたときの先頭となります。下の例文を参照ください。

(正) tert-Butyl alcohol was added to the reaction mixture.
(誤) Tert-butyl alcohol was added to the reaction mixture.  

 「tert」の他にもよく出てくる記号(本来はイタリック体で示しますが、しばしば便宜的に通常の字体が用いられることもあります)を次の例文にて紹介しましょう。

(正) cis-Dichloroethylene was isomerized to trans-dichloroethylene.
(正) N-Methylpyrrolidone was used as a solvent.
(正) 2H-Indene was heated at 100℃.  
      

 なお、例えば記号"tert"を完全にスペルアウトする場合、"tertiary"が文頭ならば大文字で始めます。

(正) Tertiary butyl alcohol was added to the reaction mixture.  

実際の英文特許明細書では、正しくない例もしばしば見かけますが、ご自身で英訳される際に知っておいて損はないルールです。


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