2010年3月 米国特許の特許期間の表示(1)
今月は米国特許のフロント・ページ中に見られる表現の解説です。
特許翻訳者の多くは米国特許の特許証や特許明細書を見たことがあることと思います。米国特許明細書のフロント・ページは、書誌的事項(特許番号、特許発行日、発明の名称、発明者名、譲受人、優先権データ等)が記載されているページです。その左カラム、譲受人名の下の、次のような Notice に気づいたことはありませんか?
(*) Notice: Subject to any disclaimer, the term of this patent is extended or adjusted under 35 U.S.C. 154(b) by 324 days.
これはどういう意味で、また、どのように和訳したらよいのでしょうか?
先ず冒頭の "subject to ~" ですが、これは「~に左右され(るが)」という意味です。
よって、上の Noticeの意味は
「何らかの権利放棄がなされていれば別であるが、本特許の特許期間は米国特許法第154条(b)項により324日間延長、即ち調整される。」
となります。
次に、簡単にこの項目が導入された理由を説明します。
米国特許の特許期間は1994年の法改正により、1995年6月8日以降に米国特許庁に出願された発明の特許期間が「米国出願日から20年」となりました(その前は特許発行の日から17年でした)。しかし、審査が遅れた場合、従前の「特許発行の日から17年」より短くなってしまうことが問題視されていました。そこで、1999年の法改正で、米国特許庁の審査が遅れたために特許発行が遅くなった場合には、その日数を一日単位で計算して特許期間を調整(延長)することになりました。これは2000年5月29日以降になされた米国出願に対して適用され、
"Adjustment of Patent Term" (特許期間の調整)といいます。
もし、"by 0 days"とあったら、延長、即ち、調整日数はゼロである、言い換えれば、権利期間は米国出願日から20年きっかりであるということになります。
なお、disclaimer とは「権利放棄」のことです。これについては次回、解説いたします。