2009年9月 特許明細書英訳時の注意点(1)
今月は、PCT出願の各国移行手続き用の明細書を英訳する翻訳者に知っていて欲しいポイントです。
特許事務所や出願人会社等、クライアントによっては、翻訳発注の際、国際出願に係る「国際公開パンフレット」のフロント頁を翻訳者に送ってこないことがあります。勿論、まだ国際公開されていない場合もあるでしょうし、また、その必要性に気付いていない事務所や、翻訳者が自分でサーチするだろうと考えているところもあるかもしれません。
その場合、翻訳者はつい、独自に自分の考えで発明の名称を英訳してしまいがちです。
しかし、当該出願が国際公開されている場合には、「国際公開パンフレット」のフロント頁に掲載された英訳をそのまま使用しなければいけないことになっています。
PCT(特許協力条約)に基づく規則48.3 "Languages of Publication" 中の (c) 項に次の定めがあります。
(c) If the international application is published in a language other than English, ....... <略>...... the title of the invention, the abstract and any text matter pertaining to the figure or figures accompanying the abstract shall be published both in that language and in English. The translations, if not furnished by the applicant under Rule 12.3, shall be prepared under the responsibility of the International Bureau.
発明の名称(や要約)の英訳が、技術的観点から、或いは明細書の開示から見て明らかに誤訳である場合でも、少なくとも発明の名称は国際公開パンフレットのフロント頁に記載された英訳をそのまま使用してください。
そして翻訳文納品の際に、修正が必要であることをクライエントに告げ、補正手続きによって修正してもらうようにします。
このように、特許分野の翻訳者は、エラーを修正するには基本的に「補正(amendment)」という手続きによるものであるということを理解しておく必要があります。