2009年6月 複数形をとらない名詞、複数形だと意味が変わる名詞
特許翻訳者は大学で理工学を専攻した方が多く、技術には詳しい反面、 英単語の基礎知識に欠ける方が時々見られます。昔学校で習っていても使わないでいるうちに忘れてしまったということもあるでしょう。
今回は、明細書に良く出てくる名詞で英訳の際に注意を要するものを5つ挙げました。
1.prior art, 2.equipment, 3.literature, 4.evidence, 5.damage
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prior art
特許では頻出する用語で、次のような訳を良くみます。
The following three prior arts have been cited. これは正しくは、
The following three pieces of prior art have been cited. や
The following three prior art references have been cited. などとすべきですので注意しましょう。 -
equipment
これも装置や機械の明細書では頻出しますが、いわゆる集合名詞ですので、「装置」という意味では複数形をとりません。
複数の補助装置が念頭にある場合でも It must be provided with auxiliary equipment. のように使います。 -
literature
「(既に)文献に記載されている」等の文脈で時々見られます。
「各種文献や書籍」を想定している場合でも、literatures とはなりません。
不可算名詞です。 The compound has already been described in the scientific literature. のように使います。なお、日本の明細書にある「特許文献」は Patent Document、「非特許文献」は Non-Patent Documentと訳します。
これらは勿論可算で複数形をとります。 -
evidence
これも不可算名詞ですので two evidences のようには使えません。
この場合は two pieces of evidence となります。
或いは場合によっては two evidential materials のようにもいえます。 -
damage
これも要注意語です。 damages と複数にすると「損害賠償(金)」となります。
「損傷」の意味では常に単数で使ってください。
この語は動詞との組み合わせも要注意です。
つい動詞 "give" を使いたくなりますが、どうでしょうか?
"cause damage" や "do damage" でしたね。
上の名詞は気をつける必要のある名詞のほんの一例です。
案外、身近な単語でうっかりすることがあるものです。
常に辞書を紐解いて確認する習慣をつけましょう。