翻訳のヒント[バックナンバー]

2023年5月 翻訳のヒント(英訳)- 新人の英作文の添削

 今回は、新人が書いた自己紹介の英文から一部を抜粋して3つの文章を添削してみたいと思います。意外に気づいていない文法ミスがありますので皆さんもどこを修正すべきか、考えてみて下さい。

 修正前の英文1:From April 1st, I have been training at ABC Company.

 まず、これは現在完了形の文章で、4月1日からABC社に勤務していることを述べています。そういうときの「から」は from ではなく since です。”from” は動作や事象の「起点の一点」を表すのに対し、”since” は「起点から現在までの継続」を意味する単語だからです。また、この文章は自分が何かをトレーニングしていると言いたいのではなく、自分がトレーニングを受けていることを述べたいのだと思います。その場合は I have been training でなく I have been trained と 受身形にしなくてはなりません

 → 修正後の英文1: Since April 1st, I have been trained at ABC Company.


 修正前の英文2:Since translation must be carried out in limited time, a translator tend to make a mistake for carelessness.

 主語 “a translator” は単数なので、これを受ける動詞 “tend” は “tends” としなければなりません。いろいろなミスをすることを想定していると思われますので、”a mistake” でなく ”mistakes” とする方が自然です。また、”for carelessness” については、言いたいことはわかりますが、”from lack of attention” とするほうが自然です。

 → 修正後の英文2: Since translation must be carried out in limited time, a translator tends to make mistakes from lack of attention.


 修正前の英文3: If I translate sentences word by word, the resultant sentences may be merely an accumulation of sentences and may have differing meanings from the original sentences or even no meanings.

 この文は恐らく、ある文章を構成する単語を一語一語訳していくと、できた英文は単なる単語の蓄積となり、原文とは違った意味になったり、或いは意味をなさなくなったりする、ということを言いたいのだと思います。その場合、複数の文に着目するのではなく、或る一文に着目して、つまり単数で発想するのが理解しやすくなります。また、”word by word” だと「一語ずつ、順に」と解釈されますので、「一語対一語(を対応させて)」という意味を出すためには “word for word” とします。さらに、できた結果物は「文章の蓄積」ではなく、「単語の蓄積」ですので、”an accumulation of words” とする必要があります。次に、”may have differing meanings” の所は differ の使い方が非標準です。よって、”may have a different meaning” とするか、或いは ”may differ in meaning” (この場合はsが付かないことに注意!)とします。最後に “or even no meanings” は ”even be meaningless” とするのがいいでしょう。

 → 修正後の英文3: If I translate a sentence word for word, the resultant sentence may be merely an accumulation of words and may differ in meaning from the original sentence or even be meaningless.


 以上、3文だけ抽出して直してみましたが、皆さんも自分だったらどこを修正したらより誤解される恐れがなく、且つ読みやすくなるか、考えてみて下さい。


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