翻訳のヒント[バックナンバー]

2022年11月 翻訳のヒント(英文書簡12)- ミスを認めて謝罪する

 前回の「英文書簡」に関する翻訳のヒントは2019年7月の「支払いの催促」でしたので、ずいぶん間があいてしまいました。そこで今回、久しぶりに簡単で応用のきく書簡文の例をご紹介します。

 仕事上のミスをしたことがないという人はいないと思います。ミスにもいろいろあると思いますが、今回はどちらかと言えば小さなミスをしてしまって、それを現地代理人事務所に指摘されたときの返答・謝罪文の書き方です。

 例えば、現地から事務所移転や担当者変更の通知が来ていたにも拘わらず、住所録の修正を忘れていて前の住所に書類をクーリエで送ってしまった、とか、前の担当者宛てのまま出してしまっていたなどのうっかりミスです。現地代理人にミスを指摘され、住所録を直しておいてください、と連絡がきたとき、例えば次のように謝罪・返答できます。

 Thank you for your letter of November XX, 2022 notifying us of our error. We have now made corrections to our master list and all future correspondence will be sent to your new address.


 もし「今後は新担当者(の Ichiro Shirai)様宛てといたします」、ということでしたら、最後の部分は

 …… and all future correspondence will be directed to Mr. Ichiro Shirai.


 となります。ここで、correspondence は形容詞 all で修飾されていますが、複数形の ”s” は付きませんのでご注意ください。

 このあと、次のような謝罪文が続きます。

 We apologize for any inconvenience this may have caused you and we thank you once again for notifying us of our error.


 簡単にするには、We apologize for any inconvenience this may have caused you.
で終わってもかまいません。

 この部分はほぼ英文手紙の定型文ですので、すらすらかけるようにしておきましょう。

 なお、I am sorry や We are sorry 等、sorry を使う表現はなるべく避けたほうが無難です。”Sorry” はビジネスレターで使うにはカジュアルだということもありますが、そもそもこの語には謝罪というより、「残念でした」とか「お気の毒でした」という情緒的ニュアンスがあり、自分の責任を積極的に認めようとするものではありません。一方、apologize の方は、自分に責任があることを認める表現ですが、反省や悔恨というウェットな気持ちは入っておらず、ビジネスシーンで使うのに最適です。

 ビジネスシーンで sorry を使うことも場合によってはありますが、その場合、上に書いたように、「お気の毒なことをしてしまいました」と受け取られると、そんなに反省・後悔しているなら責任を取ったらどうか、という風に進んでいってしまい、面倒なことになりかねません。

 今回のような誰にでもよくある事務的なミスについては、やはり情緒的でなく、事務的な語である apologize を使いましょう


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