翻訳のヒント[バックナンバー]

2023年9月 翻訳のヒント(英訳)- 「チャレンジする」

 プロスキーヤーとして、また冒険家として有名な三浦雄一郎さんも早、90歳になられたそうで、しかも2020年には首の神経が圧迫され、手足が麻痺する突発性頚髄硬膜外血腫を発症なさいました。そのリハビリの一環として8月31日、サポートの皆さんに支えられ、無事富士山登頂を果たしたそうです。

 その報道の中に「富士登山にチャレンジする」、という表現が出てきました。類似の表現は「今年こそは英検1級受験にチャレンジしたい」、とか「300万円獲得できる問題にチャレンジしますか?」など、「チャレンジする」は困難な問題に取り組むことを言う場合によく使う日本語表現として定着しているようです。

 この語はもともと、英語の challenge(挑戦する、挑戦)から来ており、「300万円獲得できる問題に挑戦しますか?」と言い換えることができます。

 しかし、この「挑戦する」、「チャレンジする」を英訳する際には注意が必要です。

 例えば、「約1,000人の人々が冨士山登頂にチャレンジした。」という原文に対して英語では、動詞の challenge を使って ”Some 1,000 people challenged to reach the summit of Mt. Fuji.” とは言いません。

 名詞の challenge は、”take on a challenge” や ”take up a challenge” という形であれば使えます。その場合、”Some 1,000 people took on a challenge to reach the summit of Mt. Fuji.” となりますが、実はあまり一般的な表現ではありません

 最も普通には、”Some 1,000 people tried to reach the summit of Mt. Fuji.”
と言えますので、”try” を使うようにするのがいいでしょう。


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