翻訳のヒント[バックナンバー]

2023年3月 翻訳のヒント(和訳)- “more than one” の和訳

 特許、特に化学やバイオの分野の特許では、数値限定が権利範囲に影響し訴訟になる場合もあることはよく知られていますので、日本語でも「以上」と「超(又は~を超える)」の違いや、「以下」と「未満」の違いについては十分理解して下さっていることと思います。

 また、これらの英訳の際にも “ XX or more” と “more than XX”“XX or less” と “less than XX” はきちんと区別すべきことはご承知の通りです。

 それにもかかわらず、ついうっかり “more than one” を「一以上」としてしまうことはありませんか?ここでもう一度再確認しておきましょう。

 “more than one” は「一より大きい(多い)」という意味です。「一を超える」とも訳せます。つまり、「一」は入りません

 ただこの「一より大きい(多い)」という日本語表現は落ち着きが悪いので、“more than” の後が1,2,3などの自然数の場合、例えば上の例の “more than one” では「二以上」と訳すこともあります

 和訳文の事務チェックで、原英文の数字と対応をとる際に “one (1)” に対して「二」となっていると、誤訳と判断されてしまう可能性もありますが、単純に誤訳としていいものではありませんので注意しましょう。

 もう少し例を挙げてみます。

 Where more than 1 taster disagrees with the results, the tasting may be repeated.

 これを、「一人より多いテイスター(味覚鑑定士)がその結果に同意しない場合、テイスティングを繰り返すことができる。」と訳しても全く間違いではありませんが、日本語として無骨でわかりにくい表現なので、次のように訳すのが普通です:

「二人以上のテイスター(味覚鑑定士)がその結果に同意しない場合、テイスティングを繰り返すことができる。」

 ほかに、“more than 2 components”, “more than 3 answers, “more than 4 cards” など、個数について問題にされている場合には、それぞれ順に、「3成分以上」、「4つ以上の回答」、「5枚以上のカード」などとなります。

 ただし、繰り返しますが、今回の話はあくまでも “more than” の後が自然数(または0)の場合ですので、それ以外の有理数の場合、例えば1.5、25.88, 2/3などの場合には、“more than 1.5 cm” であれば、和訳は「1.5 cm を超える」とか「1.5 cm より長い」となります。


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