翻訳のヒント[バックナンバー]

2020年10月 翻訳のヒント(英訳) - 耐XX性

 材料、部材、物質に関する発明では、熱や衝撃などに対する「耐性」の改善や向上に言及されることがあります。「耐」に対する最も一般的な英語は resistant ですが、これ以外の用語が良いケースもあります。resistant と他のヴァリエーションを実例と共に見ていきましょう。

1.resistant

 「抵抗力がある」という意味の形容詞で、叙述用法なら resistant to heat(熱に対する耐性)のように使われますが、heat-resistant(耐熱)のように複合語を作って限定用法で使われることがあります。heat を機械的に他の要素に変えれば熱以外に対する「耐性」を表現することができますが、resistant 以外の表現を確認したいと思います。

2.withstand

 「~に耐える」という動詞で、the tire withstands wear(このタイヤは摩擦に耐える)のように使います。電気分野で絶縁破壊に関する用語「耐電圧」に対して withstand voltage が良く使われます。

3.proof

 proof の前に対象となる名詞を伴って複合語とした上で、その対象に対する「耐性」を意味します。材料などが「耐性を有することが試験されて証明されている(-proof)」ことに端を発しています。歴史的に繊維分野では耐水性試験をした上でお墨付きが与えられていたことから、waterproof coat(レインコート)や waterproof cloth(防水布)のように使われています。他にもwaterproof watch(防水性時計)でお馴染みです。名詞としての waterproof でレインコートを意味します。

4.strength

 1.の resistant の原則に従えば、材料に関する「耐衝撃性」は impact resistance とも表現できます。しかし、通常は耐衝撃性を衝撃強度の測定によって判断しますので、「耐衝撃性を有する」イコール「高衝撃強度である」と解釈し、high impact strength のように表現します。現場の表現としては、an impact-resistant plastic plate よりは a plastic plate of high impact strength が好まれます。

5.tolerance

 寛容性や許容性が原意の tolerance で「耐性」を表現することができます。医学用語の「耐糖性(耐糖能)」は glucose tolerance であり、それ以外の表現はありません。装置が正常に作動できる温度範囲や、動植物の「ストレス耐性」には temperature tolerance や stress tolerance が使えます。


 このように「耐XX性」については resistant 以外に、各物性や性質について固有の用語が存在しますので、まずはよく調べましょう。そして適語を選択すれば各種分野における翻訳の信頼度が上がります。また、明細書中で便宜上定義された「耐XX性」を訳す際には、用語の本質的な意味や内容を検討した上で訳語を決めると良いと思います。



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