翻訳のヒント[バックナンバー]

2019年12月 翻訳のヒント(英訳) - 投入する

 化学・材料工学の工場や施設において、装置や物質流に原料や試薬、燃料等を供給する際、操業現場では動詞「投入する」が使われることがよくあります。特許明細書の英訳で原文の「投入」をどう処理するか考えることがあろうかと思います。実際の操作は「投げる」ことではないので直接 throw into という訳にはなりませんが、具体的な、操作やスケール、投入装置や投入手段に合わせた動詞を選ぶことで読みやすい自然な英文となります。「投入」に対応する代替的な動詞の例を幾つか挙げてみます。

・feed

 動物の餌だけでなく他の材料を投入する際に使えます。特に、装置にフィーダーが備えられている場合はしっくりきます。

・supply

 必要な物を供給する場合、例えば原料を投入する場合にこの動詞が使えます。

・charge

 容器にものを詰める、満たす、充電する等のイメージがありますが、ホッパー(例えば charging hopper)などを使って原料を投入する場合などに好まれます。

・inject

 injected into a chamber by means of a nozzle having several holesのような使い方があります。加圧して液体やガスを投入(実際は注入)する場合です。

・add to、put into、place in

 具体的な投入手段が明示されない場合、より一般的な動詞を使えば間違いのない表現となります。

 現場用語の「投入」は、まず具体的な状況を考慮(想像)した上で、「供給」、「注入」等の的確な技術用語に置き換え、それから英語の動詞を幅広い可能性から選択すると良いでしょう。英語で書かれた論文や技術面を理解している英語ネイティヴの意見も参考となります。

注)今回の話題の「投入」の対象は具体物であり、資金、人力、コマンド、クエリー等は除きます。



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