翻訳のヒント[バックナンバー]

2019年8月 翻訳のヒント(スペシャル) - 国際周期表年2019

 8月のヒントは恒例の「元素」です。今年2019年は、メンデレーエフが元素の周期律を発見してから150年目に当たります。国連総会とUNESCOは本年を「国際周期表年2019」と宣言し、国内外で様々なイベントを開催しています(https://iypt.jp/news)。今回は、周期表を「元素名称の翻訳」という視点から捉えたヒントをご紹介します。まずは皆様、お手元に元素周期律表をご用意ください。

1.貴ガス(noble gas)の接尾辞は-on

 歴史的には稀ガス、希ガス(rare gas)とも称された貴ガスの族は周期表一番右にあります。元素名は、ネオン、アルゴン、クリプトンのように発音の単位として「オン」(-on)で終わります(原子番号2のヘリウムを除く)。貴ガスの元素名は、例えばネオン、クリプトンはギリシア語の「新しい」(neos)「隠れた」(kryptos)という形容詞に由来し、これに「実体のある小単位」を意味する接尾辞である-onが付きます。接尾辞がoneでないことに注意しましょう。英語では neon、argon、krypton 等全て one ではなく on で綴りが終わります。この法則を利用すれば、新しい貴ガス元素がでてきても、英語名の語尾の形を推測できます。最も新しい貴ガス元素のオガネソン(原子番号118、Og)の英語綴りの最後は one でなく、oganesson となります。

2.ハロゲンの接尾辞は-ine

 貴ガスの左隣のハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素・・)の英語綴りは、fluorine、chlorine、bromine 等、-ine で終わります。この法則に従えば85番元素のアスタチン、117番元素のテネシンの語尾は分かります。実際 astatine、tenessine です。ちなみに、これら名称における -ine の " i " は基本的に長母音です。短母音になることもありますが、二重母音 " ai " にはなりませんので注意しましょう。

3.Ta、Tl、Tm、Th

 化学系の現場でよく使う方を除き、これら似たような4元素の名称を日英とも正確に綴れる方は多くありません。正解だけ記します。左からタンタル(tantalum)タリウム(thallium)ツリウム(thulium)トリウム(thorium)です。またルテニウム(ruthenium)、ルテチウム(lutetium)なども間違えやすいペアです。これらの元素については機械的に覚えてしまうか、たまにしか使わないなら、その都度気を付けて確認すればよいだけです。

 化学系の方以外は、日頃あまり見ない「周期表」ですが、元素の性質だけでなく、命名にも法則性があるのは興味深いところです。元素名の由来など調べてみるとおもしろいと思います。また、この機会に翻訳辞書やメモリーに新元素名を追加するとよいかもしれません。



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