翻訳のヒント[バックナンバー]

2017年12月 翻訳のヒント(英訳)- 例示における単数複数

 10月の翻訳のヒントに続き単数複数の話題ですが、2016年10月の翻訳のヒントの「概念 vs. 具体物」の話題にも関連します。

 化学的組成物の発明に関する明細書では、まず組成物の構成要素が列記され(クレーム相当部分)、その後各要素の具体的説明(実施形態、例示)と話が流れていきます。今回は組成物が一価アルコールを構成要素とし、そのアルコールの具体例が複数あるケースで説明します。

例1

(原文)本発明組成物は各種一価アルコールを含むことができ、例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等が挙げられる。

(訳文)The composition of the invention may contain various monohydric alcohols, for example, methanol, ethanol, propanol, butanol, and pentanol.

(解説)この英文では、複数の一価アルコールの具体例の集合が記述されますので、これを総称する「一価アルコール」は英語として複数です。

例2

(原文)本発明組成物が含むことができる一価アルコールの例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールが挙げられる。

(訳文)Examples of the monohydric alcohol which may be contained in the composition of the invention include methanol, ethanol, propanol, butanol, and pentanol.

(解説)「一価アルコール」が複数の一価アルコールの具体例の集合であることは例1と同様ですが、例2の英文では alcohols でなく alcohol で、複数の構成要素を包括する名称(ラベル)を記載したものです。従って「単数」というよりは、不可算名詞として捉えています。その概念(不可算名詞)が複数の具体物(例)を包含するという構造の英文です。

 複数の具体例をまとめる場合、それが「複数要素の集合(可算、複数)」であるか「要素の名称(概念、不可算)」であるかを意識していると、迷わず文構造を決められます。例2で Examples of the monohydric alcohols which ⋅⋅⋅⋅⋅⋅ と訳すと不自然なことに気づかれると思います。



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