翻訳のヒント[バックナンバー]

2015年1月 翻訳のヒント(英訳) - 凹凸

 明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。

 さて、電子部品の基板、半導体ウエーハ等の部品や、炭素繊維等の素材の表面粗さは、ミクロレベルでも目視レベルでも物性に影響を与えます。明細書では「凹凸を有する表面」との記載がよく見られます。この「凹凸」に対応する英語は色々ありますが、使い方に注意が必要です。まとめてみました。

1.unevenness, roughness, irregularities
 表面が平坦でないことを表わす概念として使います。これらの形容詞形を考えると分かり易いと思います。これらのうち、roughness は具体的物理量である表面粗さ(例えば surface roughness Rz)を表わすことがあるので、同一の段落等で、異なる意味で roughness を使わないほうが良いです。

2.convexo-concavity
 凹凸に一番近い雰囲気の用語で、ついつい使ってしまいがちですが、気を付けましょう。これは一面が凸で、他面が凹である構造(例えば凹凸レンズ)に使います。ですから、表面の凹凸を表現するには好ましくありません。

3.ruggedness
 地形のでこぼこを表わすのが一般的な使い方ですが、繊維等の素材の表面の様子も表わせます。但し、ruggedness には耐性(例えば cosmic ray ruggedness, 宇宙線に対する耐性)意味もあります。原和文に、耐性と表面粗さの両方が記載されていて、耐性を ruggedness と訳出する場合には、表面粗さに対して ruggedness 以外の訳語を使うと読者の誤解を防ぐことができます。

4.bump & dent
 凸は bump、凹は dent ですが、凹部、凸部の数や大きさを表現する際は、単複の両方を使える具体的な用語です。電子部品のバンプに訳語 bump を使用した場合、「凸部」や「凸状」という表現に対しては bump でなく protrusion とすれば良いと思います。

5.embossment
 エンボス加工でおなじみの embossment は、エンボス加工を経なくてもエンボス様の凹凸パターンに使えます。LEDの構成層の凹凸模様に embossment が使われることもあります。

 翻訳対象の凹凸のタイプや実態を明細書や図面から正確に捉えて用語をする必要があります。

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