翻訳のヒント[バックナンバー]

2014年4月 明細書英訳(「から」は常に "from" とは限らないことに注意)

 今回も初心者向けのヒントです。「から」を含む次の(1)、(2)、(3)のような文章はごく普通の日本語表現ですね。
 
(1)4月から6月までは試用期間だ。
(2)傷口から血が吹き出た。
(3)お茶はポットの注ぎ口からカップに注がれる。

 この中で「から」に対し "from" を使って訳すと不自然な英語表現になるものはどれでしょうか?

 答えは(3)ですね。では何故 "from" では不自然になるのでしょうか?

 それは "from" は運動や場所の「起点」を示す語だからです。お茶はもともとポットの中に入っていますから、起点がどこかと言えば「ポット」であるということになります。「注ぎ口」はポットと茶碗(上の文には明示的には出てきていませんが)の間にある部分であって、起点ではありません。こういう場合には "through" を使います。よって例えば次のように英訳できます。

"The tea is poured through the spout of the pot into a cup."

 この発想で英文にしなければならないケースは非常にたくさんありますが、ここでは例を更に2つだけ挙げておきます。

 (4)雨が格子窓から吹き込んだ。
        → ○ The rain came through the lattice window.
        → ×  The rain came from the lattice window.

 雨は窓の外に降っているのであって、それが「格子窓」を通して吹き込むのですから吹き込む雨の起点は窓ではありません。そして2つ目はあまり品が良くない例ですが:

 (5)お風呂のドアから覗く。
        → ○ peep through the bathroom door
        → ×  peep from the bathroom door

 これも、お分かりのように、出歯亀氏はお風呂(トイレ)の外にいて、覗く対象は中にいるわけです。

 一旦、元の和文中の「から」を「を通して」や「を介して」、「~経て」で置き換えてみて意味が通れば "from" でなく "through" と覚えておくといいでしょう。

 常に言葉の本当の意味に心することが大事です。

*****


過去の翻訳のヒント
その他関連項目