翻訳のヒント[バックナンバー]

2013年1月  翻訳のヒント(和訳)読み易さへの工夫

 2013年もどうぞよろしくお願い致します。

 さて、翻訳ソフトや翻訳支援ツールを利用されている翻訳者も多いと思います。特許証明書(特に科学分野)の翻訳においても、このようなソフトやツールを利用すれば文構造の明確な英文についてかなり上手く翻訳されることもありますが、 それでもまだ完全ではありません。また、要素の列記を翻訳する際に読者に負担を強いない表現とすること等にも、翻訳者の工夫が必要となります。  実際の和訳例で見てみましょう。

例1.(原文)the group R optionally having a substituent
   (和訳例)任意的に置換基を有するR

 機械翻訳すると"optionally"が、「任意的」と訳出されますが、「任意」の主体は誰なのでしょう。 この場合、原文はthe group R which may have a substituentを意味していますので、次の訳の方がわかりやすく自然です。

(工夫した訳例1)置換基を有してもよい基R
(工夫した訳例2)置換されてもよい基R

例2.(原文)A1、A2、A3、and A4 proteins
   (和訳例)A1、A2、A3及びA4タンパク質

 この訳文は間違ってはいませんし、当該技術分野の方ならすんなり読めます。しかし、タンパク質がA4で終わらずにA20まで続いていた場合どうでしょうか?
読者はA19まで「タンパク質」という情報を得ることができません。そこで最初にタンパク質であることを最初に提示してはどうでしょうか。

(工夫した訳例1)各タンパク質A1、A2、A3及びA4

 これならA100になっても間違いなく読めます。また、前後の文脈次第では「各」は不要かもしれません。なお、上のように要素が4個ぐらいであれば、次の例も可能です。

(工夫した訳例2)A1タンパク質、A2タンパク質、A3タンパク質、及びA4タンパク質

 ややしつこいとも思われるでしょうが、クレーム等で曖昧さを避けたい場合、原文では繰り返されてない「タンパク質」をダメ押しで付加すればよいのです。

 もちろん、この種の工夫は翻訳ソフトや翻訳支援ツールを利用しないときでも考えておくべきです。今年は読み手に更にすらすら読んでもらえる訳を目指しましょう。

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