翻訳のヒント[バックナンバー]

2010年1月 "utility patent"

明けましておめでとうございます。もう七草も過ぎましたが、今回は英文明細書中にもしばしば言及される "utility patent" という語を取り上げます。

日本には実用新案制度があり、この「実用新案」を英訳する際に通常、"utility model"と表現するためか、翻訳者の中には、米国からの外内出願依頼に係る英文明細書中で"utility patent"という語が出てくると、これを「実用新案」とか「実用新案特許」、「実用新案登録」などと訳してしまうケースが見られるようです。

しかし、米国には実用新案制度はありません。よって"utility patent" を「実用新案」などと訳すのは好ましくありません。

米国法でいう"utility patent"は、日本で言う「特許」に対応するものです。
米国特許法には"utility patent" の他に、"plant patent"(植物特許) と "design patent"(意匠特許)について定めがあります。いってみれば植物特許や意匠特許の領域の外にくるものがutility patentでカバーされます。
ですから、英文中に米国の"utility patent"がでてきたら単に「米国特許」でいいでしょう。

なお、特許制度は国により異なりますので、どのような技術レベルのものにどのような権利をどのような名称で付与するのかは国によって様々です。
アメリカには日本のような実用新案制度はありませんが、ドイツには日本と似たものがあり、英語では"utility model"と呼ばれています。但し日本と異なり、化学物質、食品、医薬も"utility model"の対象となります(なお、方法は日本と同様に不可)。
また、オーストラリアでは以前、「標準特許」(standard patent)と「小特許」(petty patent)の制度がありましたが、2001年に後者は "innovation patent" に変わりました。
このように制度や名称はよく改正されますので、十分注意し調べることが必要です。


過去の翻訳のヒント
その他関連項目